デスデビル州の北邪南鬼海岸。高層ビルが立ち並ぶこの地域は近年、目覚ましい成長を遂げている。

何故このような魔界に似付かわしくない光景が広がっているのか。その原因は、444年ほど前にこの地域を手に入れた超上級老悪魔、デスマイスター氏にある。

元々この近辺の土地は、デスマイスター氏が魔原野商法によって掴まされた死体と殺戮植物だらけの荒れ果てた土地だったと言う。それを当時DIY(Death It Yourself)が趣味であった氏が力づくで開拓した結果が、現在の巨大都市群なのだそうだ。

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(Death It Yourself. 自分の死に場所を自分で拵えると言う意味。老魔にとって終活の一種)


これらの建物は単に見せかけだけではない。電気水道通信等あらゆるインフラが街の隅々まで通されており、生物を魔野生環境から切り離して活動させるに十二分な環境が整っている。その上で来るもの拒まず、去るものは背中から撃ち抜くという無法な気風が評判を呼んで入植者の波は常に絶えず、魔界各地から追い出された選りすぐりのならず者たちが集まってくる。

しかし街にどれだけ魔族が集まろうとも魔族は魔族。『産業』は決して興らず、衣食住足りながら破壊と殺戮だけが起こる悪徳の楽園と化しているのもまた事実だ。

入植者による都市の破壊は凄まじい。そしてデスマイスター氏による開発量もまたそれに負けず常軌を逸してしており、破壊と創造の均衡が崩れた街は現在も際限なく拡大し続けている。


当然、こうした急速な文明化を快く思わない者も多い。

反抗勢力の軍団は毎日のように街へ押し寄せているが、外縁部に配置された4444ミリ機関銃685414門、無敵レーザー砲51137門、警備用デビル巨ゴーレム4444匹などの武装によって成すすべ無く打ち払われてしまっているようだ。


「とにかく魔界のどこにも負けない力を持つ、大都市を作りたい」

巨大なハンマーを片手に力強く語るデスマイスター氏。その眼球は老いを感じさせぬほど血走っており、ハンマーを振り下ろす剛腕が激流めいて脈を打っていた。彼の乱開発を止められる者は今後、魔王を除いてそう簡単には現れないだろう。FullSizeRender
(デスデビル州を覆い尽くさんとする名も無き巨帯都市。街の遠景を撮影するために取材班がデスマイスター氏から目を離した隙に、高層ビルが125棟増えていた)