拷問灼熱砂漠にて常軌を逸した高熱激辛料理を提供する飲食店、『感謝』が今朝、オープンした。
砂丘の影にぽつりと佇むこのお店。かつて店主が若い頃にこの拷問灼熱砂漠にて餓死しかけていた際、所持品の中に激辛マグマ地獄弁当があったことを思い出して食し生き永らえた経験があり、この感動を他魔とも共有したいという熱い想いからオープンを決意したとのことだ。

「この砂漠で食うからこそ激辛が光るっすよ」
朦朧とする意識でそう語る店主。後先考えられないこの漢の眼球は店中に迸る辛味のせいで裏返り、骨や皮や爪から常時水分が蒸発している状態のため既に余命幾許も無いのは明らか。それでも尚激辛と向き合い、客に驚きを与えようとする熱意には頭が上がらない。

一方の客側はというと、これまた筋金入りの激辛大好きデーモン達。ギガエビル大氷河から遠路はるばる来店したデス毛皮マンモス悪魔は死岩塩とデモンサソリの鬼油炒め、辣辣辣辣辣辣辣辣辣辣辣辣砂を食べ、満足げな表情を浮かべて溶解していった。

店主も客も大声でわめき苦しみ、頬から滴る汗が瞬く間に蒸発する過酷な環境。無論飲み物の提供など望むべくもないため激辛料理は凶悪さを更に増す。我こそは真なる激辛大好きデーモンであると自負する悪魔は是非この『聖地』を訪れてみて欲しい。

魔砂漠
(拷問灼熱砂漠1丁目1番地にある激辛魔料理専門店『感謝』。やや尖った砂山を目印に砂漠をさまよえばいずれ辿り着くとされる)